さて今回は、目の不自由な人へのバリアフリーを考えてみましょう。日本中には約30万人の目の不自由な人がいるといわれています。一言で目が不自由といっても、完全に見えない人(全盲)と、少し見える人(弱視)がいますし、弱視にも、全体がぼやーっとしか見えない、真中が見えない、逆に周りが見えない、暗くなると見えない(夜盲)などさまざまです。また、いわゆる色盲といわれる、色の区別がつきにくい人もいます(日本の法律では色盲の人は障害者とはみなされていませんが)。
目の不自由な場合、大きく分けて、1.外出などの移動の不便さ、2.日常生活の不便さ、3.ニュースなどの情報の入手の不便さ、などがあります。目が不自由な場合、頼りにするのは音や声を聞く「聴覚」と触って分かる「触覚」です。
移動については、白杖(はくじょう)や点字ブロックがあることはよくご存知ですね。
白杖は、杖で地面などを触り、その感触と、聞こえてくる音で周りの状況をつかむのです。あまり知られていませんが、この白杖というのは実は白だけでなく、黄色も認められています。耳の不自由な人や、一部の肢体不自由の人も持っていいことになっています。そして、重度の視覚障害の人は外出するときには「持たなければいけない」、それ以外の人は「持ってはいけない」のです。これは「道路交通法」という法律に決められています。普通の車や人の交通について決めてある「道路交通法」に白杖のことが書いてあるのは面白いですね。
点字ブロックは日本で発明された、いうことをご存知ですか。昭和40年代の初めころ、岡山県の三宅精一さんという方が、全盲の友人のために考え出し、全財産をつぎ込んで研究を重ねて作り上げたものです。今は点字ブロックに関する国の規格もでき、世界的にも広まりつつあります(まだ、韓国、オーストラリアなど一部の国ですが)。日本が世界に誇れる発明の1つです。点字ブロックには2つの種類があります。線を並べた「誘導ブロック」、点を並べた「警告ブロック」です。誘導ブロックは安全に歩ける道筋を示します。警告ブロックはそこに曲がり道や段差などがあることを知らせます。これは目の不自由な人にとってはとても大切なものなのですが、よくその上にものや自転車が置いてあって困りますね。敷き方も日本中でバラバラなのも困った現状です。また、点字ブロックがあると松葉杖の人などが転びやすい、周りのデザインと会わない、などの問題もあり、そのバランスが難しいところです。
目の見えない人の文字は点字です。点字は触って読む文字で、1つのひらがなを6つの点を使って表しています。一般に広く使われている点字はひらがなや数字、英文字で、漢字は表わせません。点字はとても便利なものですが、とにかくかさばるのが欠点です。ポケットの入る小さな英和辞典が、本棚いっぱいくらいの量になってしまいます。また約30万人の視覚障害のある人の中で点字が読める人はほんの1割くらいといわれています。先天的な視覚障害の人は学校で点字を習いますが、大きくなってから目が不自由になった人には点字を覚えるのはとても大変なのです。触覚を使うものには他にも、たとえば針を触れる時計などがあります。
音も大切なものです。日常生活用品でも、時間をしゃべってくれる時計、しゃべる体温計、しゃべる体重計などがあります。最近は画面の情報を声でしゃべってくれるパソコンソフトが発達してきました。画面にあるいろいろな文字や文章を読み上げてくれるので、キーボードを覚えれば、パソコンをほとんどすべて使えるのです。これを使ってソフトウェアをバリバリ作っている人もいます。テレビの副音声チャネルで、ドラマなどを周囲の状況の説明をつけながら放送することも行なわれています。電車の切符販売機もしゃべるようになりました。でもときどきものすごい大きな声でしゃべっている機械があり、困ったものです。バリアフリーも他の人の迷惑にならないようにすることが大切です。しゃべる体重計も、女の人が乗って「あなたの体重は60キログラムです」なんて大声で言われると恥ずかしいですね。プライバシーの点でもちょっと工夫が必要です。
1 件のコメント:
参考になりました。目の不自由な人を見かけたら助けてあげたいです。「小学」
コメントを投稿