2005/03/26

第7回 ハートビル法、交通バリアフリー法

 さて今回はちょっと趣向を変えて、バリアフリーに関する法律から「ハートビル法」と「交通バリアフリー法」を見てみましょう。
 「ハートビル法(建築バリアフリー法とも呼ばれます)」は、高齢の人、障害のある人などが便利に、安全に利用できる建物を増やすことを目的として、平成6(1994)年に作られたものです。「ハート(心)のあるビル」という意味ですね。正式には「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」という難しい名前の法律です(どうして法律の名前ってこんなに難しいんでしょうね)。
 ハートビル法では、いろいろな人々が利用する建物(その中でも、2、000平方メートル以上のかなり大きな建物が対象です)の新築、改築、増築などに対して、出入り口の段差をなくし、自動ドアをつけたりして誰でも出入りできるようにすること、車椅子でも安心して通れるように幅の広い廊下にすること、階段はゆったりとした勾配で、手すりをつけること、誰でも使えるトイレをつけること、安全な駐車場をつくること、スロープなどをつけること、エレベータは車椅子の人や目の不自由な人でも使えるようにすること、などを積極的に進めようというものです。対象となる建物には、デパート、劇場、ホテル、銀行、学校、老人福祉センター、身体障害者福祉センター、体育館、プール、博物館、図書館、ボーリング場などや、お風呂屋さん、レストラン、床屋さん、クリーニング屋さん、質屋さん貸衣装屋さんなどまで入っています。ただし、2、000平方メートル以下の建物は対象になりませんから、小さな老人ホームなどはバリアフリーが義務付けられないのが問題ですね。
 「交通バリアフリー法」は、正式には「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」という、これまた面倒くさい名前の法律で、平成12(2000)年に施行されました。これは、高齢の人、障害のある人、お腹に赤ちゃんのいる人などが公共交通機関を利用するときに、便利に、安全に移動できるようにすることを目的としています。公共交通の会社は、駅などの新設・大改良、あるいは車両などを新しくする場合に、バリアフリーの基準を守らなければならないことになっています。
 バリアフリーの基準は、駅、バスターミナル、船や飛行機のターミナル、電車、バス、客船、飛行機などについて、たとえばエレベータ、エスカレーター、点字ブロック、身体障害者用トイレ、視覚障害者の転落を防止するための設備、耳で聞こえる案内や目で見て分る案内を提供する設備、電車の中の車椅子スペース、などを作ることが示されています。また低床バスを導入すること、飛行機の肘掛は半分以上を上に上げられるようにすること、なども定められています。さらに、駅などの周辺の道路、駅前広場、信号機などのバリアフリー化を進めることも義務とされています。これには車椅子がすれ違えるだけの幅のある歩道を作ること、点字ブロックを敷くこと、点字や音声の案内を置くこと、音の出る信号機をつけること、見やすい道路標識をつけること、歩道橋などにはエレベータをつけること、などが決められています。
 このような法律を見ると、細かくいろいろ良いことが決められていて、なかなか結構じゃないか、と思うのですが、さて現実の世界は、というとまだまだのところが多いですね。建物にしても道路にしても、今あるものを改造するにはお金もかかるし、時間もかかるのです。そして、せっかく点字ブロックがあるのにその上に自転車がおいてあったり、身体障害者用トイレにカギがかかっていたり、良い法律も理解がないとうまく働きませんね。
 

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