2005/03/25

第8回 高齢の人、障害のある人へ配慮した機械の規格

 堅い話が続きます。もうちょっと我慢して読んでください。今回は高齢の人や障害のある人へ配慮した機械を作るときの規格についての話です。規格というのは。「決まりごと」のことだと考えていいでしょう。世の中にはいろいろな規格があります。規格があるからいろいろなものが共通に使えるのです。たとえば、あなたがどこかで音楽のCDを買ってきたとします。そのCDは何にもしないでもちゃんと自宅のCDプレーヤーで音楽を聴けますね.アメリカで買っても、インドネシアで買っても大丈夫です。大きくてプレーヤーに入らない。入っても音が聴こえない、なんてことはありません。ソニーのプレーヤーでは聴けるけど、ナショナルのはだめだ、ということもありません。これは世界中でCDはこういうふうに作ろう、ということを話し合って決めているからです。日本ではいろいろな工業製品の規格を日本工業規格(JIS・・・ジスと読みます)というもので決めています。CDの規格もこのJISで決められています。
 さて、このJISには、高齢の人や障害のある人のことにも配慮してものを作ろう、という規格がたくさんあります。車椅子、点字ブロック、バリアフリー住宅設備、衣料品その他たくさんのものについてそれぞれ規格が決められているのです。
 最近では、パソコン、インターネットをはじめとして、携帯電話、コピー機、ファクスなどを高齢の人や障害のある人でも使えるようにするための規格がつぎつぎに作られています.これはJIS X 8341という名前で、たとえばJIS X 8341-1「高齢者・障害者等配慮設計指針ー情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス-第一部:共通指針」、JIS X 8341-2「高齢者・障害者等配慮設計指針ー情報通信における機器、ソフトウェア及びサービスー第二部:情報処理装置」、JIS X 8341-3「高齢者・障害者等配慮設計指針ー情報通信における機器、ソフトウェア及びサービスー第三部:ウェブコンテンツ」なんて難しい名前のJIS規格が去年作られました(でも、この番号の8341というのは「ヤサシイ」。硬いお役所もちょっと味のある名前をつけましたね)。この中には、「目が見えなくてもパソコンを使えるように、音声をつかって操作できるようにしなさい」とか、「耳が聞こえなくても故障が分かるように、文字で表示しなさい」、「色が分からなくても、書いてあるグラフなどが分かるようにしなさい」、「呼気スイッチのようなものをつけても使えるようにしなさい」というようなことがたくさん決められています。
 どうしてこんなめんどくさい話をするのかというと、実は私は、この高齢の人や障害のある人のことにも配慮したものを作ろうというJIS規格を作るのに参加しているからなのです。せっかく作った規格は守られなければ意味がありません。法律ではないので、別に守らなくても罰はありません。メーカーにこの規格を守ってもらうためには、使う人にもそういうものがあるんだ、ということを知ってもらいたいのです。高齢の人や障害のある人のことにも配慮した機械やものを作るには時間やお金が余計にかかるかもしれません。だからメーカーとしては、使う人が本当にそういう製品を望んでいるのだ、ということをきちんと確認したいわけです。メーカーはいろいろ工夫してこの規格を守ろうとしています。使う人の側からもいろいろな希望を出してもらいたいと思っています。

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